にほんばしかわら版 令和3年夏季号
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働く年齢を自分で決める時代に 70歳までの就業機会の確保を努力義務として企業に課す改正高年齢者雇用安定法が、この4月から施行される。これまでの65歳までの希望者全員雇用により、柔軟な勤務形態の導入などのノウハウの積み重ねから70歳まで働くことを現実的と考える人事担当者も多く、まさに働く年齢を自分で決める時代になってきた。働く理由は、経済的理由から社会とのつながり、生きがい、社会貢献へと変化するようだが、では、企業側としてはどういう高齢者に働きつづけてもらいたいのか。専門能力があり、エキスパート、プロフェッショナル業務をこなせる人材であることが求められるが、能力も仕事意欲も多様化する高齢者について評価を聞いてみると、まず一番に「人柄の良い人」という回答が多い。ヒューマンスキルに応用できる「雑談力」 ところが、企業はこういう人柄能力を養うヒューマンスキル教育を能力開発として実施してこなかった。定年直前の退職準備教育で取り上げているが、そのときにはすでに遅いのである。短期間で成果が出ないということが実施しない理由だが、最近、明治大学の斎藤孝教授が、ゼミの学生全員に30秒の雑談対決を実施しているという話を聞いてハッとした。これがヒューマンスキル教育に応用できるのではないかと考えたからである。管理職と社員、若者と高齢者、男性社員と女性社員等といった組み合わせで短い時間を活用して雑談したらどうか。社員同士のコミュニケーション能力も上がり、仕事上の問題についても自由に話し合える風土が形成できる。 ある農機具メーカーでは、若い社員に高齢者の職場改善を任せ、両者がよく話し合った結果、高齢者は楽に働ける職場を得、若い社員は熟練者の技を吸収するという成果を得た。また、千葉県にある輸入衣料品などの検品・補修を行っているH社は、年齢に関係なく働ける生涯雇用企業だが、この職場では、ラインごとに1日一回「ザックバランミーティング」という雑談時間を設けている。テーマはなんでもよく、生活のことから仕事のやり方まで話し合われて解決していく。こんなテーマで雑談してみては 雑談のテーマはなんでもよいが、働き方についてが多くなることは当然だろう。今のコロナ禍のなかで、働き方をどう変えれば働きがいを持てるのか、効率のよい作業と面白くできる作業を結び付けられないか、ラインで一つの工程を担当するより、一人で多くの工程を担当したほうが働きがいがあるのではないか、などなど。いつまでも働ける職場は、多様な世代の共生社会だ。世代間の風通しの良い組織が求められる。【筆者紹介】長嶋 俊三(ながしま・しゅんぞう) 1947年生まれ。明治大学卒。新聞記者、TVディレクターを経て、79年より(財)高年齢者雇用開発協会発行の月刊誌『エルダー』の編集を創刊から担当。 2011年6月、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構を退職。著書に『60歳からの仕事』(清家篤慶應義塾大学教授と共著、講談社刊)、『エージレス就業社会』(共著、日本能率協会マネジメントセンター刊)などがある。70歳雇用時代に必要な世代間「雑談力」雇用問題コメンテーター 長嶋俊三

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