にほんばしかわら版 令和3年夏季号
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中小企業こそオンライン採用活かせ日刊工業新聞社 岡田直樹 2022年3月卒業予定の大学・大学院生などを対象にした企業の採用活動が本格化している。昨年は新型コロナウイルス感染防止のため、ウェブ面接による採用が一気に広まった。中小企業にとっては応募地域の広域化や経費削減などメリットも多い。コロナ禍が長期化する中で、対面とウェブの面接を組み合わせた『ハイブリッド型』が新常態として定着しそうだ。知名度では大企業にかなわない中小企業こそ、オンライン採用を上手に活用したい。 採用コンサルティングのMyRefer(東京都中央区)が就活生に実施したアンケート(調査時期20年7月)によると、複数の内定を持つ学生のうち約57%が、最終的に内定先を「1社に絞る時期」は内定式後と回答している。例年は内定式前に9割が1社に絞る。行動が慎重になった理由は「どの内定先が自分にあっているか決め手に欠ける」(約48%)が最も多かった。企業側も「本当に優秀な学生を取りこぼしていないか」など不安は尽きなかったようだ。 一方で、ウェブ面接のメリットをあげる企業も少なくない。都内で試験機器を製造する中小企業は「従来は首都圏の学生しか応募してこなかった。会社説明会や面接をウェブにしたら地方の学生も受けてくるようになった」と好感する。採用経費が前年より4割削減になったIT系の中小企業もある。ウェブ主体の採用は学生の交通費や宿泊費といった会社負担が少なくて済む。 オンライン採用で実績をあげている中小企業はインターンシップに工夫を凝らす。学生は会社説明会の焼き直しのようなインターンシップには魅力を感じない。都内のIT系企業は、志望者に「会社の○年後」をテーマにしたオンライン演劇をグループ単位で実施した。学生は準備段階で経営課題も含めた情報を提供してもらえるため、企業への理解や愛着を深めることができる。 会社説明会と一次・二次面接はウェブを利用し、最終面接のみ対面で行った中小企業のトップは「ウェブ面接だけでは職場のイメージが湧きにくい。採用は肌感覚の情報共有が大事」とみる。このため学生が自分の希望する職場かどうか感触をつかめるよう、社員とのフリートークを行った。また社員が知人や友人を紹介するリファラル採用を導入する企業が増えている。ウェブ面接での情報不足や合同説明会が開催されないことによる「出会いの場」の減少を補っている。 国連の持続可能な開発目標(SDGs)への関心が高まる中、学生は就職先を選ぶ基準として企業の社会貢献度や働きがいを重視する傾向にある。「社会課題の解決に役立つ仕事をしたい」「SDGsに配慮する企業でなければ生き残れない」との考えからだ。環境に配慮したモノづくりや再生可能エネルギーの利用、自然保護活動、事業継続計画(BCP)、健康経営などの取り組みを積極的に発信できるようにしたい。 中小企業にとってオンライン採用は諸刃の剣でもある。『ハイブリッド型』が定着すれば、インターンシップなどでは創意工夫が試されよう。学生から深い共感や十分な理解が得られない企業は、内定辞退や早期離職が多発しかねない。中小企業は個性あふれる手法で学生を魅了し、優秀な人材の確保に努めてほしい。【筆者紹介】岡田 直樹(おかだ・なおき) 1984年、日刊工業新聞社入社。記者として、金融・電機・情報通信などの産業界、総務省・経済産業省・内閣府などの官庁を担当。論説委員、論説委員長、日刊工業産業研究所長を経て、特別論説委員。埼玉県出身。

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